ノラブログ ~ネットビジネスで生活できるか実験中~

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第01話「ノライヌ、新宿に向かう」



       この物語はフィクションです。

     実在する人物、団体とは関係ありませんが、

     その限りではありません。












     野良犬的インターネットの歩き方


                                     作:九八










第01話「ノライヌ、新宿に向かう」


暑い。

ただひたすらに、暑い。

夏のコンクリートジャングル、東京都、新宿区、高田馬場。

駅前、早稲田口改札を出てすぐのガード下に、

照り付ける日差しと、アスファルトの照り返しから逃れ、

街行く人間たちを睨みつける犬が一匹。


雑種である。

首輪はしていない、どうやら野良犬だ。

生まれつきなのか、都会暮らしで排気ガスにまみれたせいか分からないが、

その全身は、銀とは言い難い、小汚い灰色、ドブネズミ色をしていた。

その汚らしい外見のせいか、誰も近づこうとしないが、

本人(犬)はそれでいいと思っている。

噛みつくのも面倒だが、保健所を呼ばれるのはもっと面倒だ。


今は、何をするでもなく、コーヒーショップの出入り口付近に腰を落としている。

どうやら、時々開く自動ドアの奥から流れてくる冷気に当たっているらしい。



ガタンゴトン ガタンゴトン



轟音を立てながら、山手線が目白方面に出発した後、

下落合方面から西武新宿線がホームに向かってきたので、

線路の上を電車が走る音が、頭上で鳴り続けた。

大きな音は嫌いではなく、一定間隔で鳴り続けるその音はリズミカルであり、

心地よさを感じることもあったが、

暑さと、

クーラーの室外機から放たれる熱風と、

早稲田通りを行きかう車から放たれる排気ガスによって、

彼の不快指数は、とうにMAX(マックス)を超えていたため、

ただ、ただ、不愉快であった。


しかし、彼は仕事の最中にあった。

働かざる者(犬)、喰うべからず。

銭を稼がなければ、食い物を買えない。

食い物が手に入らなければ、食べることができない。

食べることができなければ、飢えて死んでしまう。

いかに不愉快であっても、そんな当たり前のことを忘れるほどではない。

嫌だ、嫌だとガキみたいに駄々をこねても、

どこぞの善人が食い物を恵んでくれるわけでもないのだ。

精出せば、凍る間も無し、水車。

稼ぐに追いつく貧乏なし。


鼻息か溜め息か、どちらなのか分からない息をひとつ吐くと、

立ち上がり、ポケットからくしゃくしゃのビニール袋を取り出し、

バス停や、郵便ポスト、横断歩道の周辺を、

足元を凝視しながら歩く。

そして、シケモク(タバコの吸い殻)を見つけては、

拾い、観察し、まだ葉が残っているものはビニール袋に入れ、

葉が無かったり、濡れていたり、汚れが酷いものは、

元あった場所に戻し、移動しては、また新たなシケモクを探す。

その繰り返しだった。


この野良犬の仕事は、「シケモクを拾い集めて分解し再生して販売する業」である。

要するに、シケモクを拾い集めて、分解し、巻き直し、新たな一本に再生して販売する仕事だ。

敗戦直後の頃ならともかく、飽食の時代と呼ばれた現代においては、

競合する同業者、つまりライバルが少なく、成功するニッチ産業だと確信して始めたのだが、

近年の嫌煙・・・もとい禁煙ブームによって、成功は遠のいた。


健康のためだったり、価格上昇のためだったり、

禁煙する人間が増えた理由は様々だが、とにかく、喫煙家が減り、

材料であるシケモクの仕入れが難しくなっていたのだ。

僅かではあるが顧客がいたことで、ある程度、一定の収入があり、

どうにか生活費は賄えていたが、いよいよ、限界を感じ始めていた頃でもあった。

追い打ちを掛けるように、美化キャンペーンの開催や、歩きタバコ禁止条例の実施、

さらに喫煙マナーの向上に伴い携帯灰皿を携帯する喫煙家も増え、

街中からシケモクが姿を消す速度は増す一方だった。


「そろそろ、この稼業も潮時か・・・」

そう呟きながら、野良犬は手にしていたシケモクを転がすようにビニール袋に入れた。

以前なら回収しなかったであろう短いシケモクだったが、

僅かな葉が惜しい今となっては、貴重な材料であり、生活の支えであった。


喫煙家が減ったとは言え、幸い、野良犬には顧客がいた。

普通、犬が拾い集めたシケモクを買い取る人間などそういない。

だが、彼らは違った。

拾い集め、巻き直す手間が省けると喜ばれた。

一本単位で、安価で購入できると、重宝された。

彼らは、路上生活者だった。


陽が沈み、鉄板のように熱くなっていたアスファルトが冷め始めた頃、

野良犬は山手線沿いの道を、新宿に向かって歩いていた。

理由は三つ。

ひとつは、葉を巻く紙を購入するため。

ひとつは、顧客たちに商品を売るため。

ひとつは、友人と会うため。


葉を巻くための紙は、ヘッドショップと呼ばれる喫煙具販売店で購入するのだが、

野良犬が根城としている高田馬場にはヘッドショップが無いため、

紙が無くなりそうになると買いに出かける必要があった。

徒歩でおよそ三十分。

道中でシケモクを拾い集めるのも慣例となっていた。


顧客たちの多くは、新宿駅の近辺を根城としていた。

行き来する手間を考えると、顧客が多く存在し、ヘッドショップがある新宿近辺に

生活拠点を構えるべきではないか、そう助言されたこともあったが、

野良犬はそうしなかった。

常に多くの人がいる、いわゆる眠らない街を気に入ってなかったのだ。

そういう意味では高田馬場も似たようなものじゃないか、そう指摘されたこともあったが、

なぜだか、馬場に住むようになってから、すでに五年近く経過していた。

馬場はいいけど新宿はダメだ、そう思わせる何かがあるのかもしれないが、

深く考えたことは一度も無い。

たまたま住み始めて、住み慣れたのが馬場だった、それだけのことだ。

ちなみに、馬場と新宿の間にある、大久保の辺りに住もうと思ったことも一度も無い。

あの辺りにいるアジア人は犬を食う、という噂を信じていたからだ。


野良犬にとって顧客たちは、友人と呼べるような親しい間柄だったが、

人間ではない、同種である犬の友人もいる。

そいつは顧客の一人の飼い犬で、歌舞伎町に住んでいる。

カイ、と呼ばれていた。


カイは人付き合いが下手な野良犬と違い、世渡りが上手く、

キャバ嬢や風俗嬢にも可愛がられたりもしているが、

自分の飼い主は一人だけ、と断言する忠義の士といった一面も持つ。

野良犬は、そういう性格のカイを気に入っていた。


道中、会社員や学生といった風体の人間たちとすれ違ったが、

タバコを吸いながら歩く人間は一人としていない。

ランニング中のランナーの方が多く、一人とすれ違い、二人に追い抜かれた。


大久保通りを過ぎた辺りで、道を一本逸れ、路地を進む。

この道は、人通りが少なく、車も通らない。

コソコソと歩きタバコをするには打って付けだ。

ポケットからタバコの箱を取り出し、そこから一本取り出し、くわえ、ライターで火を着ける。

同時に、吸い込み、煙を肺に入れる。

火のついたタバコの先から流れる煙を見ながら、自らの体内からも煙を吐き出す。


何が良いのか。

時々、自分がタバコを吸っている理由が分からなくなる時がある。

そういう時はたいてい、何かに迷っている時だと知っていたし、

好きだから、だとか、癖になっている、だとか、

適当な理由を見つけて、考えるのを止めるようにしていた。

何もかも理屈通りというのは、面白くない、

生活の中に、理解できない、制御できない「何か」があってもいいじゃないか、

そんなことを考えながら、タバコをくわえ、歩く。

結局、自己満足のカッコつけなのかも、そんな結論に至ると、

知らぬ間に考え続けてることに気付く。

ひとつあくびをしてから、もう一服し、鼻に残った煙を香る。

まぁ、これがいいんだよな、ということで、と溜飲を下げる。

今はそれでいい、退屈なことを考えてたら、せっかくのタバコが不味くなる、と

半分ほど吸った辺りで、タバコの先端をアスファルトに丁寧にこすりつけ火を消し、

ぶら下げていたビニール袋の中に転がした。


途中、アジア人と思われる、恐らく中年の女が三人、

年齢にそぐわない服を着て道端に突っ立っていた。

すでに辺りは薄暗く、この路地には街灯がないため、その表情は掴めない。

彼女たちの足元に数本のシケモクを発見したが、

目が合ったら捕まえられて喰われてしまいそうな、

そんな顔をしている気がしたので、そそくさと立ち去った。

拾う側にも選ぶ権利はあるし、拾われる側にも選ぶ権利はある、

そんなことを、カイの飼い主が言っていたのを思い出した。

彼は野良犬にとっての顧客でもあった。
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